新型コロナウィルス対策で家賃を減額した場合って?

国税庁のHPで新型コロナウィルスに関する税務上の取り扱いが更新されていました。その中で行政から貸主側に要請があり、国土交通帳からも不動産関連団体に要請のありました、「賃貸物件のオーナーが賃料の減額を行った場合」の取り扱いの記載がありましたので紹介させていただきます。

 

1.貸主側が賃料を減額した場合

貸主が借主からの要望により合理的な理由がなく賃料を減額した場合、原則としてはその減額した金額は「寄付金」として取り扱われます。

例えばもともと10万円の家賃を一時的に6万円に減額した場合などは、その減額した4万円が寄付金となります。

減額した部分だけを仕訳にすると

 

寄付金 / 家賃収入

 

となり、費用と経費が両方計上されます。費用と経費が両方計上されているので課税関係は生じないようにも思われますが、詳しい説明は省きますがこの「寄付金」は全額が経費として認められない場合があります。

 

2.新型コロナウィルスの影響を受けた事業者の賃料を減額した場合

行政からの要請により賃料を減額したもかかわらず、税金が課税される金額が多くなるのは問題です。そこで、新型コロナウィルスの影響により支払が困難となった取引先に対し、被害が生じている間の賃料を減額した場合は、寄付金には該当せず税務上の損金として計上することができる旨が、今回の国税庁が公表した取り扱いで明記されており、具体的には次のような場合が想定されています。

① 取引先等において、新型コロナウイルスに関連して収入が減少し、事業継続が困難となったこと、又は困難となるおそれが明らかであること

② 取引先等の復旧支援(営業継続や雇用確保など)を目的としたものであり、そのことが書面などにより確認できること

③ 賃料の減額が、取引先等において被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を 再開するための復旧過程にある期間をいいます。)内に行われたものであること

 

ただし、この規定自体は今回の新型コロナウィルスに関連して新しくできたものではなく、もともとある通達で、「災害を受けた取引先支援をした場合は寄付金とはならない」と決められていました。今回の国税庁からの発表は、もともとの「災害」の範囲に新型コロナウィルスが含まれることを改めて明示しただけとなります。

 

また、「あくまで賃料を減額した金額が経費として認められる」、というだけであり貸主側にとっては収入が減るだけで税金が安くなるわけではありません。多くの貸主は物件の購入資金の金融機関への返済と、納税資金等により資金繰りに余裕のある事業者多くありません。個人的にはこの非常事態においては、「減額した金額の一定割合で税額控除を認める」や「減額した金額を税務上の経費として認める」等の思い切ったメリットを出さない限りは、気持ちのうえでは減額してあげたくても、自社の資金繰りや今後の経営を考えると、なかなか減額に応じることができる事業者が多いのではないかと推測します。

 

3.固定資産税の減免

新型コロナウィルスに関する事業者支援施策の一つに「固定資産税の減免」という施策があります。具体的には以下の場合に2021年度の固定資産税を一定の割合で減免する施策になります。

・2020年2月~10月までの任意の3か月間の売上高の前年同月比が

→30%以上50%未満減少した場合 : 2分の1減免

→50%以上減少          : 全額減免

 

例えば貸主側が3か月間もの間30%も賃料を減額しても、減額される固定資産税は2分の1、さらに減額されるのは来年の話となります。これでは貸主側の事業の継続に重大な影響を与えることとなるため、貸主にとってはこの施策があるから家賃の減額に応じよう、という判断は経営上とても難しいものとなるでしょう。

 

 

飲食店やサービス業、小売業者等、営業の自粛や規模を縮小しての営業等で売上が激減している事業者にとって、固定費として支出される家賃の負担は非常に重いものとなります。そういった事業者を救済するために、貸主側に家賃の猶予や減額を求める行政側の立場は理解はできますが、行政主導で貸主側にもより配慮した施策が必要になるかと思います。

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