持続化給付金について思うこと
補正予算で4.26兆円が計上された持続化給付金も、5月1日から受付が開始から2か月半近くが経過しました。経済産業省のHPによると、7月6日までに約230万件の中小企業・個人事業者の方が受給し、金額は約3兆円になっているそうです。2018年11月30日の中小企業庁公表値によると、個人事業者を含む日本の中小・小規模事業者は357.8万事業者とのことですので、65%近くの事業者の方が恩恵を受けていることになります。中小企業の事業者のなかにはコロナの影響で経営が非常に厳しくなったところも多く、この給付は非常にありがたいものだと思います。ただ、スピード給付を重視した影響により問題点も多く存在する施策だとも感じています。今回はこの持続化給付金について個人的に思うところを記載いたします。
1.必要なところに必要な金額がいきわたる仕組みになっていない
スピードを重視したことにより受給できる金額が一律最大で法人の場合は200万円、個人事業主の場合は100万円となっています。つまり、40万円から20万円に減額した法人と1億円が5千万になった法人が受け取る金額が同じ金額となります。私は、副業で法人を作って申告している人に、本業で収入が半分になった事業者と同じ金額を支給する必要がなく、必要なところに必要な金額を渡す仕組みにすべきだったのではないかと考えています。また、1億円の法人が5千1万円の売上だと1円ももらえません。書類の確認に少し時間を要するのかもしれませんが、最大金額を一律にするのではなく事業規模や売上の減収度合い、減少した金額によって金額に差をつけるべきであったと思います。
2.不正が横行している
報道等でもしばしば目にするように不正が横行していると感じています。冒頭でもご紹介させていただきましたが、7月6日の時点でおよそ3分の2の事業者が売上が半分になったとして給付金を受給しているそうですが、個人的な実感としてはこの3分の2という数字は明らかに多く、弊社のクライアント様におきましても受給している件数は4分の1~3分の1程度の事業者様だと思います。
そもそも制度の仕組み上、今年の売上が半減したと証明するための書類は自分で作った売上台帳によることとされていて、悪意を持って作ればどのようにも作れるような書類になります。おそらく売上が半分になっていないのに半分になったとして、また過去確定申告していなかったり、そもそも売上が存在しない方も不正な方法により給付金を受給しているケースもあったのではないでしょうか。個人的にはこのような不正受給にお金が流れ、本当に必要な事業者にお金がいきわたらないことが悔しくてなりません。
今回は手続き業務の委託先が問題になりましたが、例えばこの手続き業務を税務署を通じて行えば不正への抑止力はより高まったのではないでしょうか?(コロナの影響で税務調査は自粛しているとはいえ通常の業務もあるため現実的ではないとは思いますが。)また、例えば税理士から希望を募って審査・確認にあたれば、民間の機関よりもよりスムーズに審査することができ、不正に対する嗅覚もより鋭くはなるのではないかと思います。おそらく税理士が書類を確認すると、ある程度不正をしているだろうという申請者は見極めることができるのではないかと思います。その申請者について後日調査等おこなうことにより、不正受給の抑止力になったのではないでしょうか。また、現段階で明らかに不正をしている受給者の逮捕等による抑止力も必要かと思います。
個人的にはこの持続化給付金よりも、事業者の規模に応じて支給金額を変える仕組みを設けた家賃支援給付金のほうが、必要なところにより多くの金額が給付されるため不公平感の解消にもつながり、また提出書類からも不正はおこりにくく、制度としてはよくできているのではないかと思います。結果論ですが、売上が減少した事業者を助けるという観点では、持続化給付金は実施せず、最初から家賃支援給付金の制度を規模(最大の支給金額)を拡大して実施していたらよかったのではないでしょうか。