仮想通貨の税制改正について。今後の改正の展望は?

最近では投資(投機)対象としての性質も色濃い仮想通貨ですが、その仮想通貨と裏表の関係にある分散型台帳・ブロックチェーンは今後金融分野等の様々な分野において広く活用が期待される革新的な技術といわれています。

その仮想通貨ですが、税制が普及の邪魔をしているともいわれています。今回は仮想通貨に関する税制について、私なりに問題点と改正要望事項をまとめてみます。

 

問題点1、税率が高い?

仮想通貨に関する税制について論じる際に、この「税率が高い」「株やFXと同じように分離課税を適用し、20%の税率を適用してほしい」という意見をよく目にします。では本当に仮想通貨取引にかかる税率は高いのでしょうか?私の個人的な見解としては、決して仮想通貨取引に係る税金だけが特別に高いわけではないと考えます。仮想通貨取引に関しては最高税率の55%がよく言及されていますが、これはあくまで最高税率であり、適用される所得水準は4千万円以上の所得に対してとなります。つまり年間で4千万円以上を稼ぎ出した方のみが、その4千万円を超える金額に対して課税される税率が所得税と住民税を合わせて55%であり、すべての仮想通貨取引にかかる利益に対して高い税率で課税されるわけではありません。そして、この税率は仮想通貨に対してのみ適用されているわけではなく、一般の給与所得者も同じ税率が適用されます。国側は国会答弁等でも「投資商品だからと言って株やFX同様に20%の税率にする必要はない」「税率を低くすることに国民の理解が得られない」、と言っていますが、私もこの考え方については理解はできます。「貯蓄から投資へ」という考え方に基づき株式投資やFXの税率は優遇されていますが、現状のボラティリティが高い仮想通貨への投資を国策として勧めていくことは現状では考えづらい状況です。

 

問題点2、損益通算と損失の繰越控除ができない

問題点1では税率が高い、という点に対して、それは仮想通貨だけの問題ではなく給与所得等その他の収入も税率は同じだ、といいましたが給与所得と仮想通貨取引の一番の違いは、仮想通貨取引では損失が生じる可能性があるということです。例えば昨年損失を生じて、今年利益が出ても何も手当されず、今年の利益に対して税金が生じます。株やFXの取引では損益通算と繰越控除が可能です。つまり、昨年株式の取引で損失を生じ、今年の取引では利益が出た場合は昨年の損失を繰り越すことが可能なため、昨年の損失の金額までは税金が生じることがありません。また、こちらの記事でも書きましたが現状では年金の収入等の他の雑所得のみとの損益通算が可能なため平等ではない状況だと思います。そういう意味でもこの損益通算と繰越控除は税率の問題より先に実現してほしいと希望しています。

 

問題点3、決済手段として利用するたび損益計算が必要

こちらの記事でも書きましたが、仮想通貨は現状は仮想通貨で決済をすると都度損益を計算する必要があります。これでは決済手段としてビットコイン等の仮想通貨を利用することは実質的に不可能です。ブロックチェーンの普及と併せて、仮想通貨での決済やスマートコントラクトを用いた決済等の普及を促進させようとする意志があるのであれば、例えば1回の決済金額が10万円未満の支払いは非課税とする、等の税制の整備が必要だと思います。

 

問題点4、仮想通貨を他の仮想通貨に交換するたびに損益計算が必要

例えばスマートコントラクトを利用するためにビットコインを用いて他の仮想通貨を取引所で購入等した場合や、例えばイーサリアムのプラットフォーム等を用いたスマートコントラクトのサービスを利用する際にはそれに応じたトークンの購入が必要になりますが現状の税制ではどちらの場合も損益を計算する必要があります。スマートコントラクトの普及を図りたいのであれば、例えば取引所を通じて日本円に換金した場合にのみ課税関係が生じるようにする、等の税制の整備が必要だと思います。

 

このようにどの側面を見るかによって、手当てするべき税制上の問題点が異なります。決済手段としての普及を促進するうえでは少額非課税の手当てが必要だと思いますが、現状のボラティリティが高く、また個人のウォレットを整備したりと保管が難かしい現状では決済手段としては普及しないのではないかと個人的には思います。

また、投資対象や価値の保存手段としての普及を促進するうえでは分離課税として税率を軽減し、損益通算と繰越控除を手当てすべきかと思いますが、国として仮想通貨への投資を促進する理由は乏しいように思います。

過大も多い仮想通貨の税制ですが、パブリックなブロックチェーンを維持するためには裏表の関係にある仮想通貨は無視することはできません。今後も適正に議論が進みブロックチェーンとスマートコントラクトの推進の邪魔をしない税制への改革が望まれます。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です