仮想通貨の税制:『「所得税基本通達の制定について」の一部改正について』が公表されました。
国税庁は7月5日に、2019年度の税制改正に対応した『「所得税基本通達の制定について」の一部改正について』という6月28日付の通達を公表いたしました。今回はそのうち、明確化された評価方法に関する事項等の仮想通貨に関連する部分をご紹介させていただきます。
1:信用取引を行った場合の金利の取り扱い
今までは信用取引により株式を買い付け、又は売却した場合の証券会社に支払う、又は証券会社から受け取る金利に関する取り扱いはありましたが、仮想通貨を信用取引で買い付け、又は売却した場合に関する取り扱いは明記されていませんでした。今回の改正ではその点につき明記がされています。具体的な取り扱いは以下の通りです。
①信用取引により仮想通貨の買い付けを行った方が仮想通貨交換業者に支払う金利
→仮想通貨の取得価格に参入する
②信用取引により仮想通貨の売却を行った方が仮想通貨交換業者から受け取る金利
→仮想通貨の売買による収入金額に参入する
つまり、支払った金利相当額は売買により生じた利益から控除し、受け取った金利は売買により生じた利益に加算する、ということですね。
2:一時的に必要な仮想通貨を取得した場合の取り扱い
仮想通貨を売買したの損益は「売却金額‐購入金額(取得価額)-必要経費」で計算されます。(取得価額や必要経費についてはこちら)そのうち取得価額は、原則的には「総平均法」又は「移動平均法」により計算されます。ただし、「一時的に必要な仮想通貨を取得した場合」は総平均法又は移動平均法の方法では計算することができず、「個別法」の方法により計算しなければならない旨が明記されました。
「一時的に必要な仮想通貨を取得した場合」とはある仮想通貨(Aとする)を購入しようとした際に、その仮想通貨(A)が国内のどの仮想通貨交換業者においても直接に購入することができないため、いったん日本円で購入可能は仮想通貨(Bとする)を購入したのちその仮想通貨(B)を用いて仮想通貨(A)を購入することをいいます。
具体的には、例えば国内で取り扱いのないEOSをバイナンスで購入するために、国内の取引所でBTCを購入、その後そのBTCをバイナンスに送金してEOSを購入する場合におけるBTCを購入する行為のことをいいます。
「個別法」とは、取得原価の異なる仮想通貨を区別して記録し、その個々の実際原価によってその仮想通貨の価額を算定する方法をいいます。
3:仮想通貨の評価方法
仮想通貨の取得価額の計算方法は「総平均法」と「移動平均法」の2つで、原則的な評価方法は「総平均法」になります。従来は「移動平均法で計算するのが相当」とされていましたが、その計算方法の複雑さから法定評価方法が「総平均法」へ変更となりました。また評価方法を「移動平均法」に変更しようとする場合は、変更しようとする年の確定申告期限までに(例えば2019年の税金計算から評価方法を変更しようとする場合は2020年3月15日まで)変更届出書を税務署まで届ける必要があります。
また、評価方法は仮想通貨の種類ごとに選定し、届出書を提出する必要があることにも留意が必要です。
4:仮想通貨の取得価額
仮想通貨を売買した際に必要経費となる金額は、原則的には購入した金額に不随費用を加算した金額となりますが、売買による収入金額の5%とすることができます。
例えば1BTCを100万円で売却したがいくらで購入したかわからない場合は100万円の5%である5万円が取得価格となり95万円(100万円―5万円)に対して課税されます。また、この規定は購入金額が明確にわかっている場合でも適用することができるため、例えば1万円で購入した1BTCを100万円で売却した場合には本来なら99万円(100万円‐1万円)に対して課税されますが、この規定を適用することにより取得価格を5万円とすることができるため、課税対象を4万円圧縮することができます。