令和3年度の税制改正大綱って??

12月10日に自民・公明両党から令和3年度の税制改正大綱が発表されました。今回の大綱のキーワードは「ウィズコロナ・ポストコロナ」と「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」です。改正項目にはコロナの影響をふまえた既存制度の緩和措置やDXを促進するための措置が目につきましたが、既存の制度からの大きな改正はなかった印象を受けました。コロナの影響を踏まえ、大きな増税となるような改正もありませんでした。

今回はその税制改正大綱の中から、中小企業の経営や我々の生活に関わりのありそうな改正点の概要をいくつかご紹介させていただきます。

 

1.所得税

①住宅ローン控除の特例措置の延長

控除期間13年間の特例の延長

→新築の場合は令和3年9月末まで。それ以外和令和3年11月末までの契約が対象。

 

②勤続年数5年以下の短期の退職金は、2分の1課税の適用から除外

→令和4年分以後の所得税について適用。ただし、支払額300万円までの退職金については引き続き2分の1課税が適用される。

 

2.法人税

①DX投資促進税制

対象設備の取得価額の30%の特別償却又は3%の税額控除の選択適応

→産業競争力強化法の事業適応計画(仮称)の認定を受けることが必要。

→令和5年3月31日までに対象のソフトウェア等の購入が必要。

 

②カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

対象設備の取得価額の50%の特別償却又は5%(一定のものは10%)の税額控除の選択適応

→産業競争力強化法の中長期環境適応生産性向上設備(仮称)、又は中長期環境適応需要開拓製品生産設備(仮称)の認定を受けることが必要。

→令和6年3月31日までに対象資産の購入が必要。

 

③所得拡大促進税制の要件見直し

→適用要件のうち「継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加 割合が1.5%以上であること」との要件を、「雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が1.5%以上であること」との要件へ見直し。

→適用期限を「令和5年3月31日」までに開始する事業年度に2年間延長

 

④以下の特例税制の延長

中小企業者等の法人税の軽減税率の特例

→適用期限を「令和5年3月31日までに開始する事業年度」に2年間延長

中小企業投資促進税制

→適用期限を「令和5年3月31日までに開始する事業年度」に2年間延長

中小企業経営強化税制

→対象の設備が加えられ、適用期限を「令和5年3月31日までに開始する事業年度」に2年間延長

 

3.資産課税

①教育資金の一括贈与の非課税措置

→適用期限を「令和5年3月31日までの贈与」に2年間延長

→令和3年4月1日以後の教育資金贈与については、贈与者が亡くなった時点での使い残した管理残高が相続税の対象に(受贈者が在学中である場合や23歳未満である場合を除く)

→結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置も上記と同様

 

②土地に係る固定資産税の負担調整措置

→令和3年度に限り宅地等及び農地の課税標準額を令和2年度の課税標準額と同額とする

→地価下落により税額が減少する土地はそのまま減額となる

 

4.コロナの感染拡大防止とDX両方の観点から税務手続きのデジタル化を促進

①スキャナ保存制度や電子取引に係るデータ保存制度の要件緩和

→スキャナ保存制度に係る税務署による承認制度の廃止、タイムスタンプ要件を最長約2か月以内に緩和 等

→令和4年1月1日以降から施行

 

②個人住民税特別徴収税額通知の電子化

→事業者から申出があった場合は、市町村は通知書をeLTAXを通じて提供する

→令和6年度以降の個人住民税について適用

 

③国税・地方税関係書類の押印義務の原則廃止

→担保提供関係書類や相続税の添付書類のうち資産分割協議書等は引き続き押印が必要

→令和3年4月1日以後に提出する書類から適用

 

5.消費税

消費税の税抜での価格表示を例外的に認める「消費税転嫁対策特別措置法」が令和3年3月31日で期限を迎えますが、再度税込での表示を再実施していく方向であることが冒頭の「令和3年度税制改正の基本的考え方」で示されていました。

 

なお、今回の大綱では改正項目としてあがってはおりませんでしたが、昨今の働き方の多様性や所得再分配機能の回復の観点から所得税の各種控除のあり方や、相続税・贈与税のあり方についても今後は改正の俎上に上がることが想定されます。とくに贈与税に関しては、例えば教育資金の一括贈与が富裕層だけが行える贈与という節税目的の手法に対する優遇措置であり、経済格差を固定化するという批判の声を受け、今回の改正項目となりましたが、今後は毎年の110万円の基礎控除の廃止も含めて改正の検討が進んでいくものと想定されます。

なお、税制改正大綱はあくまで来年度の税制改正の方針をまとめたものであり、この後開催される国会に税制改正法案が提出され、国会で可決されるまでは改正されると決まったわけではありませんのでご注意ください。

 

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です