2020年の税制改正大綱が発表されました。

12月12日に自民・公明両党から2020年度の税制改正大綱が発表されました。今回の大綱では、法人に関する見直しは既存の租税特別措置に関して大企業の適用を厳格化したものが多くみられました。例えば、接待飲食費の50%損金算入規定については,資本金の額等が100億円超の企業は適用不可とされています。また、賃上げ税制の適用要件と研究開発税制等の適用制限要件における設備投資の基準のハードルが上げられています。また、個人に関しても厳しいものが多い印象で、例えば海外中古不動産の節税策や居住用賃貸建物の還付スキームを塞がれています。国外居住親族の扶養控除,住宅ローン控除,一般のNISAも要件が見直しされています。

今月はその税制改正大綱の中から、我々に比較的身近ないくつかの改正点をご紹介させていただきます。

 

(1)NISAの刷新、積み立てNISAの期限を5年間延長

NISAを2024年に刷新することを盛り込んでいます。現行の税法ではNISAの投資期限は2023年末ですが、その期限を2028年まで5年間延長し、新たな制度に移行させます。具体的にはリスクの低いとされる投資信託などに限定した積立枠(1階)と従来通り上場株式等にも投資できる枠(2階)を設け2階建ての制度へと移行します。年間の投資限度額は1階部分が20万円、2階が102万円で総額が現行の120万円から122万円と引き上げられます。また、積み立てNISAも投資期限が現行の2037年から2042年まで5年延長されます。ジュニアNISAは2023年までの投資期限は延長されず終了します。

 

(2)確定拠出年金の掛金の拠出期間の延長

個人が自ら運用手段を選んで老後の資産を形成する確定拠出年金については掛け金の拠出期間が延長されます。具体的には、現状は原則60歳までとなっている掛け金拠出期間が、企業型確定拠出年金が70歳まで、個人型確定拠出年金(iDeCo)が65歳まで延長されます。

 

 

(3)寡婦(寡夫)控除の見直し

現状は配偶者と離婚・死別した世帯が対象の寡婦(寡夫)控除が、未婚のひとり親にも適用が認められることとなります。年収678万円(所得500万円)以下の所得を要件に35万円の所得控除が適用されます。また、現状は要件により所得控除額が27万円と35万円に分かれていますが、今後は離婚歴や性別の違いを問わず、所得が500万円以下でひとり親であれば所得控除の額が35万円となります。2020年以後適用され、経過措置が設けられます。

 

(4)日本国外に居住する親族に係る扶養控除の適用について

現行の制度では、非居住者である親族でも親族関係書類と送金関係書類を完備し、扶養の要件に該当する場合は扶養控除の適用を受けることができましたが、今後は国外に居住する扶養親族の対象から30歳以上70歳未満の方で次のいずれにも該当しない方は除外されます。2023年以後適用されます。

①留学により非居住者となった方

②障害者

③生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている方

 

(5)国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例

個人が、国外に中古建物を所有しその建物から賃貸収入を得ている場合に、その国外の建物から得る収支が赤字の場合には、その赤字の金額のうち建物の減価償却費に相当する金額はなかったものとみなされます。従来はその損失の金額を他の給与所得等と損益通算していた方は注意が必要です。2021年以後適用されます。

 

ただし、税制改正大綱はあくまで来年度の税制改正の方針をまとめたものであり、この後開催される国会に税制改正法案が提出され、国会で可決されるまでは改正されると決まったわけではありませんのでご注意ください。

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