国税庁が「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応」を公表

国税庁はインターネットを利用したビジネスの多様化が進んでいることをうけて、6月5日に「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応」という内容の資料を発表いたしました。この中では、インターネットを利用した取引はその実態が把握しずらいことが問題視されており、今後適正な課税を強化していく分野としてネット販売やネットオークション、ネット広告と並んで暗号資産(仮想通貨)の取引が具体例として掲げられています。今回はその内容についてご紹介させていただきます。

 

シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応

 

1、シェアリングエコノミー等新分野の経済活動とは?

シェアリングエコノミー等の新分野の経済活動とは、ネットワーク上で行われる取引で、特徴として①国際的、広域的な取引が取引が比較的容易である。 ②足が速い。 ③無店舗形態の取引や人・物の移動も伴わない取引も存在するなど、外観上取引の実態が分かりにくい。 ④申告手続き等になじみのない方の参入が容易である。といった特徴があるとされており、国税庁ではこういった取引に対し、課税漏れなく適正に課税することができるよう厳しい態度で臨み、策も講じますよ、と案内したのが今回の発表になります。

 

シェアリングエコノミー等の新分野の経済活動の具体例として資料では以下のものが例示されています。

  • A,デジタルコンテンツ(動画配信等)
  • B,ネット通販・ネットオークション(メルカリやヤフオク等)
  • C,暗号資産(仮想通貨)
  • D,ネット広告(アフェリエイト)
  • E,シェアリングビジネス・サービス(民泊等)

 

2、国税庁が今後取り組むとしている対策とは?

では、これらの新ビジネス分野に対して国税庁がとる対策はどのようなものになるのでしょうか?具体的には以下のようなものが公表されています。

 

①プロジェクトチームの設置

2019年7月から「電子商取引専門調査チーム」をはじめ関係部署の指名された職員で構成されるプロジェクトチームを設置し、国税庁内や各関係部署間で連携を図り、情報収集と分析を強化すると公表されています。チームの規模は全国で200人ほどとなるそうです。

 

②情報収集・分析の充実

情報の収集のため、事業者に対しての情報提供の依頼は今までも実施されていましたが従来は協力は任意の協力要請でした。今後の2020年1月1日以後に行う強力要請については法令が整備され、高額・悪質な無申告者等を特定するために以下の3つの要件を満たす場合に限り国税庁からの要請があった際には事業者は報告を行うことが義務化されました。

ア:法定調書や協力要請等により対象情報が入手できる場合等、他の方法による照会情報の収集が困難であること。

イ:下記A~Cのいずれかに該当し、申告漏れの可能性が相当程度認めれれること

  • A:年間1,000万円相当の所得が生じ得る税務調査の結果、半数以上で申告漏れが認められている場合
  • B:特定の取引が違法な申告のために用いられるものと認められる場合
  • C:不合理な取引形態により違法行為を推認される場合

ウ:求める情報の範囲や回答期限の設定にあたっては、相手方の事務負担に十分に配慮すること

 

仮想通貨取引に限って言うと、取引所は国税庁からの要請があった際には利用者の取引履歴等の提出が求められることとなります。これは国税庁の横暴のようにも見えますが、現状でも税務調査の際には税務署は代表者等の銀行口座の入出金を調べることは普通に行いますし、証券会社も年間取引報告書を、銀行は100万円以上の海外送金があった際には海外送金等調書を税務署に提出しています。そのことから考えると、仮想通貨に関してのみ特別厳しい目が向けられているというわけではないかと思います。ただし、なんでもかんでも税務署であれば我々利用者の情報を得ることができる、という状況はやはり望ましいものではないかと思いますので、ほんとに違法性が疑われる場合に限り照会をかける、等の制度の運用を適正に行ってほしいものだと思います。

 

3、デジタル・フォレンジックの活用

大口・悪質な申告漏れに対しては、租税条約等に基づく海外当局への情報提供要請と併せて、個人のパソコンのログの解析等も含めたデジタル・フォレンジックの手法も活用しながら証拠の収集に努めることも公表されています。脱税が疑われるような場合は、個人のPCの解析まで行うということですね。

 

いずれにしても、仮想通貨に関しては国税は力を注いで課税漏れを防ごうとしていることが分かります。

 

 

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